「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」は、毎年多くのボランティアの協力によって支えられています。その中で、神楽坂のまちを良く知り、かつ、このイベントで演じられる伝統芸能について積極的に学ぶボランティア有志によって構成された「まち舞台コンシェルジュ」たちが、当日に各スポットで、伝統芸能や神楽坂について詳しくていねいにご案内しています。今回お話を伺うのは、その「まち舞台コンシェルジュ」の増井さん、藤野さん、眞壁さん、水谷さん、杉浦さん、青木さん、山本さん、佐藤さん、宍戸さん。そんな地元の皆さんとつなぐ役割で、当イベント主催のNPO法人 粋なまちづくり倶楽部の日置圭子が、プロデューサー・小野木豊昭と共にお話を伺いました。
――当イベントに関わることになったいきさつについて教えていただけますか?
増井 実は2013年の1回目は奈良の着物イベントに参加していて、「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」に参加したのは2回目からなんです。神楽坂に長く住んでいて、まちに思い入れがあり、盛り上げていきたいという気持ちがあります。それなのに神楽坂でこんな素晴らしいイベントが行われているとは知らずに、参加できなかったことを後悔したので、2回目は友達の結婚式の招待をキャンセルして参加しました。神楽坂の歴史、文化伝統の「受け手」そして「伝え手」としての役割を担いたいと、いつも思っていますので。
藤野 昔、神楽坂に住んでいて、結婚を機に離れましたが、今でもこのまちが大好きです。神楽坂が大好きで、日本舞踊をこのまちで習っていて、日本の伝統文化が大好きで、だから「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」のボランティアの話を聞いた時には、「やるしかない!」と思い、参加を決めました。他にも神楽坂のまちづくりに関わっていますが、中でもこのイベントには特に思い入れがあります。
眞壁 私は17年位前から神楽坂に住んでいます。神楽坂がすごく素敵だなと感じるのは、伝統文化が、路地、横丁などまちの隅々にまであることです。そんな私がボランティアや「まち舞台コンシェルジュ」に参加したのは、鈴木俊治さん(NPO法人粋なまちづくり倶楽部)や増井さんにお誘いいただいたのがきっかけでした。
水谷 私は3年位前から神楽坂に住んでいて、地元ともっとつながりが欲しいと思ってNPO粋なまちづくり倶楽部のボランティアに参加したんです。そうしたらちょうど同じ頃に引っ越して来られた佐藤さんや杉浦さんとお友達になれて、それから増井さんたちやずっと神楽坂に住まわれてる方とのご縁もできました。ボランティアからコンシェルジュになって、良い経験をさせていただき、素晴らしい出会いをくれた神楽坂にもっと貢献したいなと思っています。
杉浦 このイベントを私が知ったのは2回目の時でした。たまたま遊びに来たらイベントをやっていて、路上で一流の方々の生の演奏を無料で聞けることに感動し、私もなんらかの形で関わりたいなと思ったのが、ボランティアに参加したきっかけです。
青木 父が趣味で詩吟と民謡と尺八を、他にも身近に箏をやっている人がいて、もともと伝統芸能が身近にありました。これまでは観客として楽しんでいましたが、神楽坂界隈に住んでいるのでボランティアに関わりたいと考えていた時にお誘いをいただいて、去年からお手伝いをすることになりました。
宍戸 私は神楽坂の様々なイベントに関わってますが、このイベントは最初、観客として楽しんでいました。全長800mの神楽坂のいたるところで伝統芸能を観ることができる、一日中楽しめる素晴らしい取り組みだと感動し、翌年からはお客様に楽しんでもらう側に回りたいと思い、ボランティアに参加することに致しました。
――「まち舞台コンシェルジュ」という試みに、実際に参加してどう感じられましたか?
眞壁 あらためて日本人として日本のことをあまり知らない、だから日本のことをちゃんと知りたいって思いました。「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」は伝統芸能を知るには、素晴らしいイベントなので、自分の勉強のためにも楽しくやらせていただいています。
小野木 ありがとうございます、そういう想いや背景を持っていらっしゃる方々がボランティアに参加なさっているからこそ伝統文化のすばらしさが伝わるのだと、つくづく思います。
水谷 勉強会では覚えることも多くて大変だと思ったんですけれど、常に経験をフィードバックしてより良くしていこうという、制作チームの皆さんの情熱に触れることができて、参加して本当に良かったと思っています。
山本 昨年に「まち舞台コンシェルジュ」としてお手伝いをさせていただいて、人との触れ合いをこれまで以上に感じました。例えば「まち舞台コンシェルジュ」だからとお声をかけてくださった方に、富山・城端出身の老夫妻がいらっしゃったんです。城端の方が「庵唄」の演奏をしていると聞いたので、観に来たとおっしゃっていて、そこで温かい交流が生まれました。そういう方たちとこの機会に関わりを持って、富山と神楽坂、そして他のまちの方ともつながりができて、互いに交流しながら発展しあって行けたらいいと考えています。
宍戸 私たちは演奏される伝統芸能や出演者の方々をご案内する他に、“舞台”となっている“神楽坂”をご紹介する役も担っています。この地で生まれ育っている自分だからこその、神楽坂の魅力や歴史、時には穴場スポットを一人でも多くの方に伝えられたらと思っています。
――イベントに参加したときの印象的なエピソードをお聞かせください。
佐藤 3~4年位前からボランティアに関わっていますが、初めて参加した時は、あまり神楽坂に詳しくなかったため、スタンプラリーでお客様に場所を聞かれた際に、うまく説明ができずにお叱りをいただいてしまったことがありました。その時は自分の不甲斐なさに落ち込んだんですけれど、まちのことをもっと知って、今度はお客様にイベントを快適に楽しんでいただこうと、気持ちを改めました。それから毎年ボランティアをやっているのは、神楽坂を知れば知るほど好きになり、そしてイベントでは素晴らしい出会いがあるからです。
水谷 昨年、お客様へのアンケートを担当した際に、想像よりも神楽坂外からのリピーターが多かったんですよ。前回は一人で来たけれどもとても良かったので、今回は友人を連れて来た……娘を連れて来た……っておっしゃられて。
またイベントの内容からか、ご年配から若い方まで着物を着る良い機会ととらえられている方もいて、私たちが考えている以上に、いろいろな世代や嗜好の方に人気があるのだと実感しました。
杉浦 このイベントを知らずにたまたま遊びに来られた方が、「伝統芸能が路上で見られるなんて! こんな素敵なイベントを、住んでいる方や神楽坂が好きな方たちが集まって協力して作っている…ここは良いまちですね」と感激なされていました。そのことをあらためて誇りに思い、その気持ちを大事にして「まち舞台コンシェルジュ」を続けていけたらと思いました。
宍戸 去年は特に中国語圏のお客様が多く、一緒にボランティアに参加した友人は中国語が堪能だったので大活躍していました。それを見て、海外からのお客様がいらっしゃっても楽しんでいただけるイベントだと、あらためて思いました。
――「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」にどのようなことを期待なされていますか?
山本 実はコンシュルジュをきっかけに、もっと伝統芸能を知りたいと考えて、去年から小唄を習い始め、今日も三味線の練習をしました。音感が違うのと、唄と三味線を両方やるのでいろいろと難しいですが、お稽古はとても楽しいです。自分のように、このイベントが伝統芸能に親しむきっかけとなるといいなと思っております。
小野木 それこそこのイベントの目指すところですし、私たちがいちばん望んでいることでもありますし、嬉しいかぎりです。
杉浦 神楽坂はもともと、江戸から続いている和の文化を感じたいという思いで来られる方が多いので、その期待に応えようとしているイベントだと思います。ですので伝統芸能の良さを知っていただくお手伝いをしたいです。あと…個人的にはもっとプログラムに邦楽囃子入れて欲しいです!
小野木 多くの方々が個人的に、これを観たい、あれを聞きたいという思いの集積が、毎回のプログラムに活かされていると思うんです。そしてこのジャンル、あのアーティストが選ばれる……。ですから、そのようなご意見はどんどん頂戴したいです。ここまで伺ってきますと、皆さんの神楽坂への、そしてこのイベントへの熱い思いを受けとめます。こうした思いの集積が毎回のプログラムに活かされて、ジャンルやアーティストが選ばれるのだと思います。ですから、これからも皆さんとのコミュニケーションをさらに密にして行けたら、皆さんの思い、つまりは神楽坂という「まち」の思いをこのイベントに反映できるんじゃないかと思うんです。
青木 このイベントに来ていただいたお客様に、神楽坂に行けばコトや人と出会えると思っていただける機会にしたいと思っています。
増井 生まれ育った神楽坂でいろいろなことに関わってきて、今まで自分が受け継いてきたこのまちの文化や縁などを大切にして、次の世代につないで受け渡していけたらと考えています。